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Tの備忘録

ダイアリーや書評など。

【書評・考察】世界で突き抜ける

書評・考察

まずはじめに、本書はNewsPicksに掲載されたメタップス代表取締役である佐藤航陽氏と竹中平蔵氏による対談をまとめたものである。
279ページに渡り、リーダーシップ、教養、テクノロジー、先見力という4つのテーマに沿い2者がそれぞれ意見を述べている。
【書評】現代語訳 論語と算盤と同じく、印象に残った言葉を並べながら本書を紹介・評したい。

リーダーシップ

リーダーとして物事をマクロで捉えたりミクロで捉えたりすることの切り替えについて対談される中、竹中平蔵氏はアートについて以下のように述べている。

アートに触れると、本当に世の中を見つめ直すというか、自分を見つめ直す瞬間があるじゃないですか。アートって感動なんですよね。それは映画でもいいし、音楽でもいい。感動した瞬間に心がリセットされて、もう1回自分のやりたいことい向き合えたり、本当に大事なことに気づいたりする。そういう効果がアートにはあると思います。(竹中)

これは誰しも経験があると思うので分かり易いと思うが、絵画や彫刻に限らず映画や音楽もアートとして考えるとそれは確かに感動である。(エンターテイメントの側面もあると思う)
僕はこの息抜きとも捉えることのできる文化的な活動を頻繁に取り入れるタイプで映画やドラマは好んで観るし、漫画やアニメも時々嗜むが、大抵異なる世界観や人物たちのストーリーに感動したり笑わせられたり考えさせられる。これは竹中氏によるところの「心がリセットされて、もう1回自分のやりたいことい向き合えたり、本当に大事なことに気づいたりする。」瞬間であると思う。
さらにかの吉田茂ブッシュ大統領ケネディ大統領などもこのような文化的な時間を週末に取り入れていたと言う。

個人差はあるだろうが人間誰しも日々ストレスはかかっているはずなので、息抜きやリセットするための習慣や方法を見つけることは1日1日を豊かで生産的なものとするためにとても有効であると思う。

教養

僕は教養とパッションを両立させるのは難しいと思っているんです。つまり、教養を持つようになって、いろいろな歴史とか法則性を理解すると、何かを恨んだり何かを攻撃したりするのが難しくなるでしょう。言ってみれば、どんなことでも別に誰が悪いわけでもないから。こっちから見たらあっちが悪人でも、相手の立場になればこっちが悪人ですし。そう言うことは国と国の対立でもあるでしょう。

でもその一方で、ビジョンとかパッションを持つと言うことは、何かを激しく思い込むということでもある。視野が狭くて思い込みが激しいと、それが突進する力になると思うんです。でも教養を広げていろいろなものを知ってしまうと、いまの世の中、たいていのものはそれなりに合理的に成り立っている。(佐藤)

これは本当にその通りだと思う。
僕が以前友人と会社を設立しようとしていた頃、彼は「俺はエンジニアじゃないからコードを書けないけど、だからこそ実現可能かどうかなど気にせずプロダクトに対して口出しする」と言っていた。
教養というわけではないが、僕も全くコードを書くことができなかった学生の頃の方がアイデアが次々と浮かんでいたように思える。そして最近いつしかバイト先の店長に言われた「普通技術はあるけどアイデアがなくて困るんじゃないかな」という一言の意味を覚ったりした。
教養は身につけるべきであると思うが、どこかで社会の合理性を割り切りビジョンを掲げることがリーダーには必要なのだろうと切に思う。

余談だが、佐藤氏はブログや他の著書でも「人生の賞味期限」という表現でこれと同じことを言及している。


でも私はなんだか最近、いろいろなことを知りすぎると、人間って不幸になるんじゃないかと思うんです。つまり視野が狭いうちはひとつのことだけ見てればいい。でも視野が広がっていろいろなものを選べるようになると、そのなかからどれかを選ばなきゃいけなくなる。どれかを選ぶということは、どれかを落とすということだから、「もしかしたらこっちを選んだほうがよかったんじゃないか」という後悔と無縁でいられない。なので、選択の幅が広がれば広がるほど、人間の幸福感って下がっていくのかなと思います。(佐藤)

これも先ほどの教養とパッションの話に通ずるものがある。
特に情報にアクセスしやすくなった現代であれば誰でも経験があるのではないだろうか。就活で複数社から内定をもらった学生、複数の異性から同時に告白された場合、インターネットショッピングでものを買うとき、現代においてこの問題は誰しもが直面していると思う。

また、これに対して竹中氏は以下のように述べている。

これは行動経済学にもよく出てくるたとえですけど、会社の食堂があって、そこはいつも1種類の定食しかないとします。「もっとメニューを増やせないのか」と言ったら、ある日突然、メニューが10万種類になった。そんなのとても選べるわけがない。そうなったとき最高のぜいたくというのは「シェフにお任せ」なんだよね。(竹中)

なるほどインターネット業界で話題となるコンシェルジュ型のサービスはまさしく情報・選択肢の多すぎる現代における「最高のぜいたく」であろう。

先見力

変化していく世の中に対応していかなければ衰退していく一方であるが、果たして現在の日本はゆでガエルであるのかという論点について石油ショックを経験した竹中氏は以下のように述べている。

エレベーターがもったいないからといって、ビルの6階とか7階まで階段を上らされましたからね。 (中略) だから、省エネ技術を開発するしかなかったんですよ。でもそのおかげでいまの日本は、GDPの1単位を生み出すために使うエネルギーと排出するCO2がアメリカとヨーロッパの2分の1です。インド、中国と比べると9分の1。こうなった最大の要因は石油危機です。(竹中)

これは小さな失敗をしている場合の方が結果として強くなる傾向にあるということを示唆すると共に、現在の日本に対して希望を見出している。
また佐藤氏は日本について、豊かさ故のイノベーションの必要性の少なさや移民がいないが故の国民の危機感のなさについてこれと同じことを言及している。


以上が本書で印象に残った2者の言葉であるが、共感できる部分や参考になる点、考えさせられることの多い1冊であった。
書籍の他にもNewsPicks有料会員の方はそちらでも閲覧することができるので若者を中心とし多くの人にオススメしたい。

newspicks.com